明石の君2006/01/09 17:30

君待ちて 飽かず眺むる冬の庭

      波の代わりに 雪の音を聞き



「源氏物語」の中で、様々な恋の遍歴の後、ついに源氏の君は
六条院に自分と係わりのあった女性たちを集めて住まわせます。
春夏秋冬の趣きを持つそれぞれの館ごとに、そこに似合う女性を
住まわせると言う、なんとも華やかなこと・・・

冬の館に住むことになったのは、明石の君でした。
生まれたばかりの娘を、紫の上に育てさせるからと源氏の君に
取り上げられ、嘆きの淵にあったであろう明石の君。
最初は、京に上っても源氏の君の邸とは離れた大堰川の近くに
住んでいましたが、六条院に移ることを承知したのは、やはり
手離した娘が気にかかったからなのでしょうか。

お正月の衣装を、それぞれの女性たちに贈った源氏の君ですが、
明石の君が高貴でエキゾチックなその衣装を、あまりにも見事に
着こなし、さらに部屋も衣装に合わせた唐風の趣向にしていたので
ついに新年の最初の日を、明石の君のもとで過ごしてしまいます。
明石の君の演出の勝利、と言うところですね(笑)

控えめでいながら、自分の魅力の見せ方をしっかり知っていたので
あろう明石の君。
けれど、なつかしい明石の浦を離れ、娘とも離されて・・・
哀しさや心細さに、じっと耐えていたはず。
明石の海の波の音も聞こえない冬の館で、ひとり何を思っていた
のでしょう。